トランプ氏、BRICS諸国に100%関税も辞さず-脱ドル推進なら
特にロシアは、ウクライナ侵略に伴い科された経済制裁もあって、脱ドル化の機運を高めたい強い動機がある。中国もロシアへの制裁を目撃して、その決意を改めて強めているといえよう。実際、世界の外貨準備高に占めるドルの割合は6割弱と減少傾向にあり(資料2)、中央銀行が金の保有を積み増す動きもみられる。
BRICSにおける議論の中で、「脱ドル化」は注目されるテーマの一つである。2023年8月に南アフリカで開催された首脳会議の声明には以下のような記載がある。
ここで、BRICSの枠組みにおける中露の思惑を考えてみよう。ロシアのウクライナ侵略を機に西側=民主主義陣営と権威主義陣営の対立が加速しているなかで、中露は西側への対抗軸としてグローバル・サウスとの経済的・政治的な連携を広げようとしている。現在、タイやマレーシアがBRICSへの加盟を希望しているとされ、「加盟希望国は30か国以上」との報道もある(注2)。2024年10月のBRICS首脳会議にはこれらの非加盟国も招待し、中露は「決して孤立していない」ことを誇示するものと思われる。
「脱ドル体制なら関税100%」 トランプ氏、BRICSをけん制
このような価値観や政治体制、経済力の多様性は、BRICSが西側G7のように近しい目線で結束することが極めて難しい枠組みであることを示唆している。
BRICSは、2023年まではブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国で構成され、各国の政治体制や価値観は大きく異なっていた。例えば、ブラジル、南アフリカ、インドは民主主義国家である一方、ロシアと中国は権威主義的な体制を維持している。そして、2024年1月に新規加盟した国々(エジプト、エチオピア、イラン、UAE、サウジアラビア(注1))は中露と同様にフリーダムハウスの自由度スコアで低位に位置している国々である(石附(2024)参照)。経済力をみると中国とエチオピアのGDPは100倍以上の差があり、一人当たりGDPはエチオピアの1500ドル余りからUAEは5万ドル超とかなりの幅がある。人口もインド・中国はUAEの100倍超である(資料1)。
2024年10月にロシアのカザンで開催されるBRICS首脳会議は、議長国ロシアがその主導権を取りつつ、グローバル・サウス(中露以外の途上国)を中露側に取り込もうとする場となりそうだ。多くのグローバル・サウスの国々が招待されることが想定され、それぞれの国の思惑も首脳会議の動向を理解する上で重要な要素となってくる。経済制裁を科せられたロシアは「脱ドル化」をはじめとして、非・西側の枠組みへの賛同の広がりを誇示したい動機に満ち溢れている。他方で、同会議の参加国の多くは非・西側はともかくとしても、反・西側とは見做されたくはないであろう。本レポートでは、BRICSという枠組みの多様性と内在する矛盾、内外の力学を探っていく。
非・西側の結束を誇示したい中露を中心に、今後、BRICSの場では「脱ドル化」のイニシアティブが成果として強調されていくと思われますが、ドルの強さは当面揺らぐことはないでしょう。
[PDF] BRICS諸国のʻ脱ドル化ʼ策 の現実と中国の対外金融の 限界
脱ドル化とは、国際取引や中央銀行の外貨準備において米ドル(以下、ドル)への依存を減らし、他の通貨の利用や金の保有を増やす動きを指します。ウクライナ侵略に伴うロシアへの経済制裁のインパクトもあって、中露を中心にドルへの依存から脱却したいとの強い動機があります。
「脱ドルなら100%関税」 BRICSの動きけん制―トランプ氏
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
「脱ドルなら100%関税」=BRICSの動きけん制―トランプ氏
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一部の新興国は、米ドルが支配する世界金融システムからの脱却を試みている。 Michael Raines
BRICSの場においては、2023年8月の首脳会議の声明で、各国の財務大臣や中央銀行総裁に対して現地通貨や新たな決済手段の利用拡大についての報告を求めるなど、具体的な取り組みを進めようとしています。
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今回のパートナー国拡大におけるもう一つの大きな焦点は、東南アジア諸国の動向だ。この地域では、ASEAN(東南アジア諸国連合)創設国5カ国の国力が大きい。そのうちの3カ国(インドネシア、マレーシア、タイ)が、親露的なベトナムとあわせて、今回BRICSのパートナー国になった。特に人口やGDP(国内総生産)において圧倒的な存在感を持つインドネシアが入った意味は大きい。同国とマレーシアはを管理する重要な2カ国でもある。現在のASEANで明確に親米的で反中的な政策をとっている有力国は、フィリピンくらいだろう。残る有力国のシンガポールは、豊かな国ながら小国であるため、より穏健で中立的である。BRICSは今後、地域としての東南アジア全体を取り込んでいくための強固な基盤を獲得したと言える。これは中国にとっても大きな勝利だろう。
独自の決済プラットフォーム創設を(BRICS) | 地域・分析レポート
ユーラシア中央部「ハートランド」のロシアから、中東を貫通してアフリカ大陸に伸びていく加盟国の並び方は、今やBRICSの背骨と言ってもよいほど、太い柱になり始めている。ユーラシア大陸とアフリカ大陸の接合性に着目し、両者をあわせて「世界島」と呼んだのは、イギリスの代表的な地政学理論家ハルフォード・マッキンダーだったが、プーチン大統領がこのような地政学の考え方に深い関心を持っているだろうことがうかがえる。
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なおアルジェリアについては、昨年に加盟に強い意欲を見せながら、エジプトの加盟だけが認められたことに立腹し、BRICSへの態度を硬化させたと伝えられていた。これを考慮して、北部からは特別に二つの有力国が加盟する流れとなった。このような調整措置は、今後も引き続き導入されていくだろう。それにしてもアフリカの準地域の仕組みを十分に意識したうえで、拡大が進められていることは、戦略的な計算を施したうえでの拡大であることを印象付ける。
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今回新たにBRICSのパートナー国となった13カ国のうち、トルコは、ユーラシア中央部のロシアと中東を結ぶ地域大国のパートナー加盟国として、注目に値する。旧ソ連圏からもベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンがパートナー国となった。BRICSを通じてロシアが立場の強化を図ろうとしている動きがさらに明確になった。
アフリカからは、カザンに代表を送っていなかったナイジェリア、ウガンダ、そしてアルジェリアがパートナー国となった。アフリカでは、北部・東部・中部(大湖地域)・南部・西部という「準地域」の考え方が強く、大陸全体を扱うアフリカ連合(AU)も、5つの準地域機構と密接な結びつきをもって運営されている。南部アフリカの南アフリカ、昨年加入した東部のエチオピアに加えて、西部のナイジェリア、中部(大湖地域)のウガンダが加盟する手続きに入ったことによって、BRICSはおおむね5つの準地域から加盟国を迎え入れる仕組みが整うことになった。
「脱ドルなら100%関税」=BRICSの動きけん制-トランプ氏
一つ目について言えば、まずはロシアが開催国であったことが注目の理由であった。プーチン大統領は国際刑事裁判所(ICC)に逮捕状を発行されたため、ICC締約国への渡航が思うようにはできない。モンゴルにおける式典に出席したことは話題となったが、今月18・19日にブラジルで開催されたG20サミットは欠席した。昨年に南アフリカで開催されたBRICS首脳会議も欠席した。自国開催の場合、逮捕の恐れはないが、ロシアを嫌う国際世論が強ければ参加国数は伸び悩むだろう。たとえば欧州諸国の指導者であれば、プーチン大統領に会うだけでスキャンダルだ。実際にハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、プーチン大統領に会った、という理由で糾弾された。
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10月22~24日のロシアのタタルスタン共和国カザンにおけるBRICS首脳会議が強い注目を集めたのは、大きくは三つの理由があったと言える。一つはプーチン大統領の国際的な位置づけ、二つ目はBRICSの拡大の行方、三つ目が脱ドル政策の方向性だ。
ロシアによるBRICSの米ドル放棄の推進は、正式な合意や西側金融システムの代替機能が整備されたことで重要な節目に達しました。
プーチン大統領は、基本的には、トランプ政権の誕生を歓迎するだろう。だが、迷いもあるはずだ。アメリカとの敵対関係を前提に「脱ドル化」の政策を推進し、その流れにそって、10月にロシアで開催したBRICS首脳会議も成功させた。トランプ氏が当選したからといって、「脱ドル化」の旗振りを突然やめるわけにもいかない。トランプ大統領から融和的な対ロシア政策を引き出しつつ、引き続き「脱ドル化」政策を模索していくために最適な方法を、見出していきたいはずだ。そのような気持ちが、トランプ氏当選を祝福しつつ、なお政策論に関しては慎重さを崩していない態度につながっているだろう。
トランプ次期大統領、BRICSの暗号資産による脱ドル計画を批判
プーチン大統領は、制裁を科せられたがゆえに、かえって敵対的な「脱ドル化」の政策を国際的に推進するようになった。その「脱ドル化」実現のための最重要の国際的枠組みが、BRICSである。トランプ氏は、プーチン大統領の挑戦的な政策の含意を深刻に受け止め、対処したい旨を表明したわけである。